ブライダル業界の重鎮から学ぶ、これだけは知っておきたい結婚式お母様の衣装選びのポイント
安部トシ子先生に伺うご両親の心構えとは
今回は特別ゲストをお招きしています。ウエディングプロデューサーの草分け的存在として、日本のウエディング業界に多大な貢献をなさっていらっしゃる安部トシ子先生です。
安部先生は、日本に教会式のウエディングを広められた第一人者でいらっしゃって、私が「安部先生」とお呼びして師と仰ぐ大先輩でもいらっしゃいます。
今回は安部先生に、新郎新婦のご両親の心構えを伺いました。
お母様としてふさわしい衣装選びとは?
はじめまして、安部トシ子です。今回はお招きいただき、ありがとうございます。
安部先生のことをご存知ない方もいらっしゃると思うので、最初に簡単に先生のプロフィールをご紹介したいと思います。安部先生がウエディング業界に入られたのは1980年代前半でしたよね。
ええ、教会で結婚式をする女性が増え始めた1981年に、私は青山のウエディングドレスショップで、スタイリストとして仕事を始めたのがきかっけでした。そのとき、花嫁となるお客様から、結婚式の当日がとても不安だから、ぜひ私に1日ずっと付き添ってほしいと、頼まれたのです。
当時はまだ花嫁さんに付き添うプロのウエディングコーディネーターのような存在が、日本にはなかった時代ですよね。
そうですね。花嫁さんはウエディングドレスを着てホテルと教会を行き来するのですけど、そのとき花嫁さんのそばにつききりでサポートするような役目の方はおりませんでした。花嫁さんとしては初めての経験ですもの、それはそれは心細いですよね。当時のドレスは、今よりベールも長くてボリュームがあり、移動するのも一苦労でしたから。
それで、先生は花嫁に付き添う、プロのチャーチアテンダーを育てようと心にお決めになって、「オフィース・マリアージュ」を設立されたのですね。
ええ、1983年のことでした。
結婚式の形態は、ずいぶん変わりましたか?
時代と共に結婚式のあり方が変わってくるのは、当然ですよね。でも、大切なのは、そこに関わる人たちの気持ちです。思い出に残る感動のある結婚式にしてあげたい。そう願う気持ちは、いつの時代も変わりがありません。
とくに花嫁花婿を育てられたご両親にしてみれば、結婚式はお子さんを送り出す大切なセレモニー。パーティーとはわけが違いますよね。
ええ、今の時代はご両親の考え方も、昔とは違ってきているのでしょうけど、やはり結婚して幸せになってほしいと思う親心は、いつの時代も同じでしょう。
お子さんの結婚式を迎えるうえで、大切なことは何でしょう?
そうですね、まず、お子さんの結婚式の1日をイメージしてみることですね。
どんな結婚式になるか想像するということですか?
はい、そうです。式場はホテルなのか、それともカジュルなレストランなのか。ご招待するお客様は何人くらいなのか。花嫁さんは和装なのかウエディングドレスを着られるのか。そうした情報をもとに、目をつぶって、お子さんの結婚式を想像してみるのです。
私たちスタッフもよくやります。新郎新婦がどんなご結婚式をなさりたいのか、イメージがしっかりとできていないと、お二人の望むお式になりませんからね。
そうでしょう。そして、そのイメージした結婚式の中にいる、お母様、お父様ご自身のお姿を想像していただきたいのです。
客観的に自分の姿を思い浮かべてみるわけですね。
そうすると自然とシーンが浮かんできて、お母様、お父様の立場として、どんなふうに振舞えばいいのか、どんな服装がふさわしいのか、そういうことが少しずつ見えてくると思います。
なるほど、お母様の衣装を選ぶときは、そうしたイメージが大切ですよね。
ええ、ご自分のお好きなデザインや着たいドレスという、そのお気持ちだけで衣装を決めてしまうと、後悔する場合も出てくる気がしますね。
私もそう思います。
先生、私が先日担当したカップルは、新郎のお母様の衣装を選ぶとき、花嫁さんが一緒に同行されたんです。新郎のお母様は、ご自分の息子さんに相談するのではなく、花嫁さんに「どうかしら?」「どちらが似合う?」と聞いていて、花嫁さんも自分のお母様のように、親身にアドバイスされていました。和気あいあいとしたご試着会でしたよ。
それは良かったですね。ご結婚式をきっかけに、相手のお母様やお父様と親しくなっていくというのは理想的ですね。結婚相手のご両親は、結婚したら家族になるんですもの。
本当にそうです。結婚式の準備を進めていると、相手のご両親と意見が合わない場合も出てきます。新郎新婦からそうした愚痴がこぼれたとき、私はいつも言います、「相手のお母様は、あなたが大好きになった人を育てた人よ」って。
結婚式は、双方のご家族が初めて一緒に行う大切なセレモニー。そこでバランスの良い双方のお母様やお父様のご衣装というのはとても大切です。衣装は見た目で判断されるからこそ、ないがしろにはできないものです。
黒留袖しか選択の余地がなかった時代とは違って、今は洋装もいろいろ選べるからこそ難しいのかもしれません。
フォーマルの場をわきまえた、上品でセンスのよい服装であれば、参列された方々からも「素敵なお母様ね」と思われることでしょう。そう思われることは、お母様ご自身もとても嬉しいことと思いますが、それ以上に、素敵なお母様に育てられた新郎新婦の株も上がるのです。
こんなに素敵なお母様に育てられた花嫁さん、花婿さんなら、自分の子供を任せても大丈夫だと思いますものね。
お子さんたちにとって最高の結婚式にして差し上げるためにも、お母様として皆様から祝福されるような衣装選びを心がけてほしいですね。
安部先生、今日はお時間いただき、ありがとうございました。これを読まれているお母様、お父様へ、お子さんのご結婚式はお互いの家族が1つになる良いチャンスだと思います。この機会に、双方のご家族が共にコミュニケーションを取り合って、「素敵な結婚式だったね」と後々まで話せるような、そんなお式をぜひお迎えください。
M&Vスタッフの編集後記~J子のつぶやき♪
安部先生、今回はご登場、ありがとうございました。
お話を伺って、私たちショップのスタッフもとても参考になりました。
実は、安部先生からはこんなお言葉を頂戴したのでした。
お母様の洋装化は今後も増えていくでしょう。私も、先だってお母様の衣装について、ご相談を受けました。
そういうとき、まずフォーマルウエアのドレスコードの基本をきちんと説明することが大切ですね。その上で、お母様の当日の役割や立ち位置、タイミングなどの様子をしっかりイメージ出来るようにお伝えして下さい。
それからお母様ご自身のご希望をお聞きしながら、ご衣装選びを進めていきましょう。
お式の当日、お母様が選ばれたご衣装をお召になっている姿を想像して、どこか問題はないかを一緒に考えることも大事ですよ。
それを心がけていれば、きっとお客様に喜んでいただけるはずです。
身に沁みるお話でした。
お母様のご衣装をコーディネートするということは、普通のアパレルのショップスタッフとは違う、という意識を持つと良いですね
とおっしゃっていただき、気持ちが引き締まる思いでした。
M&V for mother スタッフは日本フォーマル協会でフォーマルファッションマナーのライセンス保持者です。今回の安部先生のお言葉を共有しながら、これからもお母様たちに「ドレスにして良かった」 と言っていただけるよう、ファッションマナーに含めて、ブライダルマザーの皆様をサポートしていきます。
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安部トシ子 プロフィール日本に教会式のウエディングを広め、結婚式をプロデュースするウエディングプランナーの先駆けとして活躍。1983年南青山にウエディングプローデュース会社「オフィース・マリアージュ」を設立。クイーンエリザベスⅡ世号のウエディングプローデュースを始め、数多くの結婚式をプロデュースされていらした。「感謝」「けじめ」「感動」のある挙式を大切にし、1組1組心を込めてサポートすることをモットーに若手育成にも力を入れている。http://www.office-mariage.co.jp